- 食品商社のハラル対応とは、自社の認証取得ではなく取引先メーカーの認証支援・物流手配・書類整備を担う役割
- インドネシア向け輸入食品は2026年10月までにハラル認証が義務化。商社主導で取引先の対応を促す必要がある
- 認証ルートは「BPJPH直接申請」と「日本の認証機関経由」の2つ。輸出先に応じた機関選定が重要
- 物流は3ゾーン制・専用車両・温度管理が求められ、日本通運・兵機海運・キョクレイ等が対応
- 認証費用は1ライン20〜300万円+物流コスト。SHLN登録費は800,000ルピア/件
2026年3月時点の情報です。
食品商社のハラル対応とは|メーカーとの違い
食品商社のハラル対応とは、自社で製品を製造するのではなく、取引先メーカーのハラル認証取得を支援し、認証済み製品の輸出・流通を一貫して管理する業務のことです。
メーカーが「製造ライン単位」で認証を取得するのに対し、商社は以下の役割を担います。
- 情報提供:輸出先の認証要件・義務化スケジュールを取引先に伝達
- 認証機関の選定・紹介:輸出先に合った日本の認証機関を提案
- 書類整備:原産地証明書、衛生証明書、ハラル証明書等の輸出書類を手配
- 物流手配:ハラル対応の倉庫・輸送業者の選定と手配
- SHLN登録:インドネシア向けの海外ハラル認証商品登録手続き
ハラル認証はサプライチェーン全体(原材料→加工→包装→貯蔵→物流→陳列)でのハラール性確保が求められます。商社はこのチェーンの「物流〜陳列」を担う立場であり、メーカーの認証取得だけでは不十分です。
ステップ1:対象製品と輸出先の要件を整理する
ハラル対応の第一歩は、取引先の製品と輸出先国の要件を正確に把握することです。
輸出先別の義務化スケジュール
インドネシアでは段階的にハラル認証が義務化されています。
| 期限 | 対象 |
|---|---|
| 2024年10月(実施済み) | 食品・飲料・食肉処理(国内大中企業) |
| 2026年10月 | 輸入食品、化粧品、医薬部外品、包装材、日用品等 |
| 2029年10月 | 市販薬(OTC)、医療機器(B) |
輸入食品は2026年10月17日が期限です。商社として取引先メーカーへの情報伝達は急務といえます。
確認すべき項目
- 取引先の製品に豚由来成分・アルコールが含まれないか
- 原材料リストの全成分がハラル適合かどうか
- 輸出先で求められる認証機関はどこか(国によって相互承認が異なる)
- 包装材の原料に動物性油脂が使用されていないか
ステップ2:認証ルートと認証機関を選定する
認証ルートとは、どの経路でハラル認証を取得するかの選択肢のことです。大きく2つのルートがあります。
ルート1:BPJPH直接申請
インドネシアのハラル認証機関BPJPHに直接申請する方法です。SIHALALポータルからオンラインで手続きできます。インドネシア市場のみをターゲットとする場合に適しています。
ルート2:日本の認証機関経由
日本国内の認証機関で取得し、相互承認を活用する方法です。日本語で手続きが完了するため、初めてのハラル対応では取引先メーカーの負担が軽くなります。
日本の主要認証機関と相互承認
| 機関名 | 略称 | BPJPH | JAKIM | SFDA | GCC |
|---|---|---|---|---|---|
| 日本ムスリム協会 | JMA | ○ | ○ | − | − |
| 日本ハラール協会 | JHA | ○ | ○ | ○ | ○ |
| ムスリムプロフェッショナルジャパン | MPJA | ○ | ○ | ○ | − |
| 日本イスラーム文化センター | JIT | ○ | ○ | ○ | ○ |
たとえばインドネシアとサウジアラビアの両方に輸出する場合、JHAまたはJITを選ぶと1つの認証で両市場をカバーできます。ハラル認証の費用相場も事前に確認し、取引先への提案資料に盛り込むとスムーズです。
ステップ3:SHLN登録手続きを進める
SHLNとは、海外で取得したハラル認証商品をインドネシアに輸入するための登録制度(Sertifikat Halal Luar Negeri)のことです。インドネシア向け輸出には認証取得に加えてこの登録が必須です。
SHLN登録の流れ
- 登録:輸入業者がSIHALALにアカウント作成し、SHLNメニューからデータ・書類を入力
- 確認:BPJPHが書類の完全性・正確性を検証。不備がある場合は5営業日以内に追加提出(未提出で自動キャンセル)
- 支払い:BPJPH請求書発行後、7営業日以内に支払い(未払いで自動キャンセル)
- 発行:デジタル署名承認を経てSHLN登録番号が発行
費用と有効期間
- 登録費用:800,000ルピア/件(約8,000円)
- 有効期間:原産国のハラール認証期間に依存
商社の実務としては、取引先メーカーが認証を取得した後、現地の輸入パートナーと連携してSHLN登録を代行するケースが一般的です。自動キャンセルの期限が短いため、書類の事前準備が重要です。
ステップ4:ハラル対応の物流を手配する
ハラル物流とは、ハラル製品と非ハラル製品を物理的に分離して保管・輸送する物流体制のことです。認証済み製品でも、輸送中にハラール性が損なわれれば認証の意味がなくなります。
保管の要件
- 3ゾーン制:ハラルゾーン、非ハラルゾーン、検疫ゾーンの物理的分離
- ハラル対応の洗浄剤を使用(アルコール系不可)
- FEFO/FIFO方式での在庫管理
輸送の要件
- 専用車両の使用が原則
- 共有車両の場合はセルトゥ洗浄(水と土で7回洗浄)が必要
- ハラル品は非ハラル品の上方に配置(滴下汚染防止)
- 温度管理の記録(コールドチェーン)
日本のハラル物流対応企業
| 企業名 | 拠点 | 特徴 |
|---|---|---|
| 日本通運(NX) | 東京・大阪・福岡 | 国内唯一の一貫ハラル物流 |
| 兵機海運 | 神戸 | 国内初のハラル認証倉庫(2015年) |
| キョクレイ | 横浜 | 冷凍・冷蔵倉庫でのハラル対応 |
ハラル認証の包装要件も物流と密接に関わるため、包装材の確認と合わせて物流手配を進めることを推奨します。
主要貿易ルートの所要日数
| ルート | 所要日数 |
|---|---|
| 日本→シンガポール | 7〜10日 |
| 日本→マレーシア | 8〜12日 |
| 日本→ジャカルタ | 10〜14日 |
| 日本→ドバイ | 18〜25日 |
| 日本→ジッダ(サウジ) | 20〜28日 |
ステップ5:輸出書類を整備する
輸出書類の整備は、商社が最も直接的に関与する工程です。輸出先ごとに必要書類が異なるため、事前のリスト化が重要です。
サウジアラビア(SFDA)向けの必須書類
- 原産地証明書のコピー
- 商業インボイスのコピー(製品詳細、数量、賞味期限、バッチ番号含む)
- 船荷証券のコピー
- 衛生証明書のコピー
- ハラル証明書(肉・鶏肉・ゼラチン等に必要)
- ハラル屠畜証明書(肉・鶏肉製品に必要)
サウジアラビアでは輸入者が「Ghad」プラットフォームに登録し、食品アイテムの事前登録が必要です。通関申請は「Fasah」貿易プラットフォーム経由で行います。年間5件以下かつ2,000kg以下の場合はライセンス付き倉庫が免除されます。
中東向けの輸出を検討している場合は、UAE・サウジアラビア向けハラル食品輸出ガイドに詳しい情報をまとめています。
インドネシア向けの追加要件
- SHLN登録番号(ステップ3で取得)
- ハラールロゴ表示:紫色が基本(黒・白モノクロも可)
- 登録番号をロゴの下に表示
- シール貼付も現時点で許容(耐久性があり容易に損傷しないもの)
費用・期間のまとめ
食品商社がハラル対応を進める際の費用と期間の目安をまとめます。
| 項目 | 費用目安 | 期間目安 |
|---|---|---|
| ハラル認証取得(メーカー側) | 20〜300万円/ライン | 3〜12か月 |
| SHLN登録 | 800,000ルピア/件(約8,000円) | 2〜4週間 |
| ハラル対応物流(倉庫保管) | 通常倉庫の10〜30%増 | 契約次第 |
| 輸出書類整備 | 数万〜十数万円/件 | 1〜2週間 |
認証費用はメーカー側の負担ですが、商社がコスト感を把握しておくことで取引先への提案がスムーズになります。ハラル認証の補助金・助成金の情報提供も有効な支援策です。
よくある質問(FAQ)
食品商社自体がハラル認証を取得する必要はありますか?
商社自体が認証を取得する必要は基本的にありません。ハラル認証は「製造ライン単位」で取得するため、認証の主体はメーカーです。ただし、商社が自社倉庫でハラル製品を保管する場合は、倉庫のハラル認証が必要になるケースがあります。
取引先メーカーがハラル対応に消極的な場合、どう説得すればよいですか?
インドネシア向け輸入食品の2026年10月義務化という期限を伝えることが最も効果的です。認証なしでは輸出ができなくなるため、ビジネス上の必要性として提示できます。費用感(1ライン20〜300万円)と補助金制度の情報もあわせて提供すると理解を得やすくなります。
認証機関はどの機関を選ぶべきですか?
輸出先によって異なります。インドネシアのみならJMA・JHA・MPJA・JITの4機関いずれも対応可能です。サウジアラビアやUAEも含む場合はJHAまたはJITが複数市場をカバーできます。
SHLN登録は商社が代行できますか?
SHLN登録はインドネシア側の輸入業者が行う手続きです。日本の商社が直接登録することはできませんが、現地の輸入パートナーと連携し、必要書類の準備や手続きの進捗管理を支援するのが一般的な商社の役割です。
物流でハラル専用車両が手配できない場合はどうすればよいですか?
共有車両を使用する場合は「セルトゥ洗浄」(水と土で7回洗浄する儀式的洗浄)を行えば対応可能です。ただし、ハラル品は非ハラル品の上方に配置する等の注意が必要です。日本通運、兵機海運、キョクレイ等のハラル対応企業に相談することを推奨します。
まとめ
食品商社のハラル対応は、自社で認証を取得するのではなく、取引先メーカーの認証支援から物流・書類整備まで一貫して管理する「コーディネーター」としての役割です。
2026年10月のインドネシア輸入食品義務化まで残り約半年です。まずは取引先メーカーの製品リストを整理し、認証が必要な品目を特定するところから始めてください。

