ハラル認証の包装要件|段ボール・印刷インク・パッケージの注意点

ハラル認証の包装要件|包装ラインのイメージ 輸出・物流
この記事のポイント
  • 食品がハラルでも包装材に豚由来成分があればハラル認証は取得できない
  • 日本の段ボールはでんぷん糊主体で元々ハラル適合性が高い
  • 印刷インク・コーティング剤に動物性油脂が含まれていないか確認が必要
  • インドネシア向けはBPJPHロゴ(紫色基本)と登録番号の表示が必須
  • PP42/2024により包装工程でもハラール/非ハラール製品の分離が求められる

ハラル認証における包装要件の全体像

ハラル認証の包装要件とは、食品の包装材料・包装工程・ラベル表示のすべてにおいてハラール性を確保するための基準のことです。(2026年3月時点の情報です)

ハラール性の確保はサプライチェーン全体に及びます。具体的には「原材料→加工→包装→貯蔵→物流→陳列」の6工程すべてが対象であり、包装はその中核的な工程の1つです。食品そのものがハラルであっても、包装材に豚由来成分が含まれていればその製品はハラルとは認められません。

包装のハラル対応は大きく以下の4ステップで進めます。

ステップ内容確認ポイント
1. 包装材料の原料確認動物性油脂・豚由来成分の有無を調査段ボール糊、フィルム、コーティング
2. 印刷インクの確認インク原料に動物由来成分がないか調査バインダー、溶剤、添加剤
3. 包装工程の分離ハラール/非ハラール製品の物理的分離器具の共用禁止、洗浄手順
4. ラベリング・表示輸出先国の表示規定に準拠ハラールロゴ、登録番号、非ハラール表示

ステップ1:包装材料の原料を確認する

包装材料の原料確認とは、段ボール・フィルム・トレー等の包装資材に動物性油脂や豚由来成分が使用されていないことを検証する作業です。

段ボール・紙器

日本の段ボールはでんぷん糊を主原料とする接着剤が一般的であり、元々ハラル適合性が高いのが特徴です。ただし、以下の点は確認が必要です。

  • 接着剤:でんぷん糊であれば問題なし。動物性ゼラチン系の接着剤は不可
  • 耐水・耐油コーティング:ワックスやラミネートの原料に動物性油脂が含まれていないか
  • 再生紙:再生原料のトレーサビリティが確保できるか

プラスチックフィルム・軟包装

PP(ポリプロピレン)やPET(ポリエチレンテレフタレート)等の合成樹脂フィルムは、原料が石油由来であるため基本的にハラル上の問題はありません。注意すべきは以下の点です。

  • スリップ剤:フィルムの滑り性を向上させる添加剤に、動物性のステアリン酸アミドが使われていないか
  • 帯電防止剤:一部の帯電防止剤に動物由来成分が含まれる場合がある
  • バリアコーティング:ガスバリア層の原料確認

マレーシアではMS 2565:2014というハラル包装専用のガイドラインが存在します。この規格では、包装材の原料に動物性油脂が使用されていないことを明確に求めています。

確認の進め方

包装材サプライヤーに対して以下の情報を書面で確認することが実務上の基本です。

  • 原材料の全成分リスト(MSDS:製品安全データシート)
  • 動物由来成分の有無に関する宣誓書(Declaration Letter)
  • サプライヤー自身がハラル認証を取得している場合はその証明書

ステップ2:印刷インク・コーティングを確認する

印刷インクの確認とは、包装の外装印刷に使用するインクやニスの原材料にハラム成分が含まれていないかを検証することです。

一般的な印刷インクはラード(豚脂)やタロー(牛脂)由来の脂肪酸をバインダーや乳化剤として使用している場合があります。以下のポイントを確認してください。

確認項目リスク要因対応方法
バインダー(樹脂)動物性油脂由来のアルキド樹脂植物油ベースのインクを指定する
溶剤エタノール(発酵由来)の使用揮発性のため最終製品に残留しなければ許容される場合が多い
添加剤・乳化剤動物由来のステアリン酸、レシチン植物由来の代替品を使用する
ニス・コーティングシェラック(ラック虫由来)の使用合成樹脂コーティングに変更する

日本の大手インクメーカーの多くは、植物油ベースのインク(大豆油インク等)を標準的に提供しています。発注時に「動物由来成分不使用」を明示した仕様書を作成し、サプライヤーから確認書を取得しておくと、認証審査がスムーズに進みます。

ステップ3:包装工程でハラール/非ハラール製品を分離する

包装工程の分離とは、ハラール製品と非ハラール製品の包装作業を物理的に分けて行うことです。

インドネシアのPP42/2024(政府規則42号/2024年)では、包装工程を含むすべての製造プロセスでハラール/非ハラールの分離が求められています。具体的な要件は以下のとおりです。

  • 器具の共用・交互使用は禁止:包装機械、計量器、シーラー等を非ハラル製品と共有しない
  • 洗浄・メンテナンスの分離:器具の洗浄やメンテナンスも別の施設・設備で実施する
  • 保管エリアの分離:包装前の原料、包装後の完成品ともにハラール/非ハラールを物理的に隔離して保管する
  • 作業員の教育:包装工程に携わるスタッフにハラール管理の教育を実施する

専用ラインが難しい場合の対応

中小食品メーカーでは専用包装ラインの設置が難しいケースもあります。その場合は以下の対応が考えられます。

  • 時間帯分離:ハラール製品の包装を先に行い、その後非ハラール製品を処理する
  • 洗浄手順の文書化:切替時の洗浄手順をSOPとして文書化し、記録を残す
  • セルトゥ洗浄:豚由来の汚染が疑われる場合は水と土で7回洗浄する儀式的洗浄を実施

いずれの場合も、認証機関の監査で手順書と実施記録の提示を求められるため、文書化は必須です。

ステップ4:ラベリング・表示規定に対応する

ラベリング対応とは、輸出先国が定めるハラール表示規定に従って、包装上のロゴ・番号・警告表示を正確に行うことです。

インドネシア向けの表示要件

インドネシアではBPJPHが定めるラベリング規定に従う必要があります。

項目要件
ハラールロゴ紫色が基本。黒・白のモノクロ印刷も可
登録番号BPJPHロゴの下に登録番号を表示
表示方法直接印刷のほか、シール貼付も可(耐久性があり容易に損傷しないもの)
非ハラール表示豚由来成分を含む場合は「MENGANDUNG BABI」の文言と豚の絵を表示

シール貼付が認められているため、既存の包装デザインを大幅に変更せずに対応できます。ただし、シールは容易に剥がれない耐久性が求められるため、粘着力のあるラベル素材を選定してください。

マレーシア向けの表示要件

マレーシアではJAKIM認証のハラールロゴを使用します。MS 2565:2014に基づき、包装材そのものがハラル基準を満たしていることが前提です。ロゴの使用には認証機関からの正式な許可が必要です。

ハラール認証免除品目の注意点

インドネシアではハラール認証が免除される品目(一部の農産物等)であっても、収穫から包装までのフローチャートの提出が求められます。認証免除だからといって包装工程の管理が不要になるわけではない点に注意が必要です。

よくある質問(FAQ)

日本の段ボールはそのままハラル認証に使えますか?

日本の段ボールはでんぷん糊を主原料としており、基本的にハラル適合性が高いです。ただし、耐水コーティングや印刷インクに動物性油脂が使われていないか、サプライヤーに書面で確認する必要があります。

包装材にもハラル認証は必要ですか?

包装材単体のハラル認証は必須ではありませんが、食品のハラル認証審査では包装材の原料確認が行われます。マレーシアにはMS 2565:2014という包装専用のハラルガイドラインがあり、対マレーシア輸出では準拠が求められます。

インドネシア向けのハラールロゴはシール対応で問題ないですか?

シール貼付は現時点で認められています。ただし、耐久性があり容易に損傷しない素材を使用する必要があります。BPJPHロゴは紫色が基本で、黒・白のモノクロも可です。登録番号はロゴの下に表示してください。

包装ラインを非ハラール製品と共用できますか?

PP42/2024では各工程で器具の共用・交互使用が禁止されています。ただし、時間帯分離と適切な洗浄手順を文書化し実施記録を残すことで、同一設備での対応が認められるケースもあります。認証機関に事前に相談してください。

印刷インクで特に注意すべき成分は何ですか?

バインダーに使われるアルキド樹脂(動物性油脂由来の場合がある)と、添加剤に含まれるステアリン酸やレシチン(動物由来の場合がある)が主な注意成分です。植物油ベースのインク(大豆油インク等)を指定すると対応しやすくなります。

まとめ

ハラル認証の包装要件は、「材料の原料確認」「印刷インクの確認」「工程の分離」「ラベリング対応」の4ステップで整理できます。

  • 日本の段ボールはでんぷん糊主体で適合性が高いが、コーティング・インクは要確認
  • PP42/2024により包装工程でもハラール/非ハラール分離が必須
  • インドネシア向けはBPJPHロゴ(紫色)のシール貼付で対応可能
  • サプライヤーへの書面確認と文書化が認証審査の鍵

まずは現在の包装材サプライヤーに動物由来成分の有無を確認することから始めましょう。輸出全体の流れについては「日本からハラル食品を輸出する方法」、認証取得の手順は「ハラル認証の取得方法|条件・基準・審査の流れ」、費用の目安は「ハラル認証の費用相場」もあわせてご確認ください。

参考文献