ハラル認証の取得方法|条件・基準・審査の流れ

ハラル認証の取得方法|食品工場の監査イメージ ハラル認証ガイド
この記事のポイント
    • ハラル認証の取得は「準備→申請→書類審査→現場監査→認定」の7ステップ
    • ISO9001・HACCP等の品質管理体制が前提条件(JHA等で必須)
    • 取得期間の目安は半年〜1年、費用は機関や規模により数十万〜数百万円
    • 輸出先国が認める認証機関を選ぶことが最重要

ハラル認証取得の全体像

ハラル認証の取得方法とは、認証機関への申請から認定までの一連のプロセスのことです。基本的な流れは7つのステップで構成されます。(2026年3月時点の情報です)

ステップ内容期間目安
1. 前提条件の整備ISO9001・HACCP等の品質管理体制を構築未取得の場合は数ヶ月
2. 認証機関の選定輸出先国の相互承認を持つ機関を選ぶ1〜2週間
3. 事前コンサルティング可能性診断・改善点の洗い出し1〜2週間
4. 書類準備・申請原材料リスト・製造フロー等を作成し提出1〜2ヶ月
5. 書類審査認証機関が原材料・工程を書面で審査1〜2ヶ月
6. 現場監査監査員が工場を実地調査1日〜数日
7. 認定・マーク付与審査委員会の承認後、認証書を発行1〜2ヶ月

マレーシアJAKIM向けの認証の場合、全体で半年から最長1年程度が必要です。既にISO9001やHACCPを取得済みの工場は大幅に短縮できます。

ステップ1:前提条件の整備

前提条件の整備とは、ハラル認証の申請前に必要な品質管理体制を構築することです。

日本ハラール協会(JHA)をはじめ、多くの認証機関では以下のいずれかの認定取得を申請の前提条件としています。

    • ISO9001(品質マネジメントシステム)
    • HACCP(食品安全管理手法)
    • GMP(適正製造規範)
    • ISO22000(食品安全マネジメントシステム)

各国のハラル認証規格はISO9001やHACCPをベースに作成されているため、これらの品質管理体制が整った工場はハラル認証への移行がスムーズです。

また、マレーシア規格MS1500:2019では、内部ハラル管理を担当するムスリム人材の任命が求められます。社内にムスリム従業員がいない場合は、外部のハラルアドバイザーとの契約を検討する必要があります。

ステップ2:認証機関の選定

認証機関の選定とは、自社の輸出先国が相互承認を持つ認証機関を選ぶことです。これがハラル認証取得で最も重要な判断です。

輸出先対応する日本の認証機関
マレーシアJMA、JHA、MPJA、JIT(4機関すべて)
インドネシアJMA、JHA、MPJA、JIT(4機関すべて)
シンガポールJMA、JHA、JIT
タイJMA、JHA
サウジアラビアJHA、MPJA、JIT
UAEJHA、JIT
カタール・トルコJIT

注意:日本の認証機関は常に承認取り消しリスクがあります。特にインドネシア向けは最新の承認状況を必ず確認してください。

各機関の詳しい比較は「日本のハラル認証機関を徹底比較」で解説しています。

ステップ3:事前コンサルティング

事前コンサルティングとは、認証取得前に自社工場のハラル対応状況を診断し、改善点を洗い出すプロセスです。

多くの認証機関では「可能性診断」や「事前審査」として、有料で工場の現状評価を行います。この段階で確認される主なポイントは以下のとおりです。

    • 原材料に豚由来成分・アルコールが含まれていないか
    • 製造ラインで非ハラル製品との交差汚染リスクがないか
    • 保管場所でハラル製品と非ハラル製品が適切に分離されているか
    • 洗浄方法が適切か(ナジス汚染がある場合はセルトゥ洗浄が必要)
    • ムスリム従業員またはハラル管理責任者の配置

ステップ4:書類準備・申請

書類準備とは、認証機関に提出する申請書類一式を作成することです。一般的に以下の書類が求められます。

    • 申請書:企業情報、対象製品、製造拠点の基本情報
    • 原材料リスト:すべての原材料のハラル性を証明する書類(仕入先の認証書コピー等)
    • 製造フロー図:原材料の受入から製品出荷までの工程図
    • 品質管理マニュアル:HACCP・ISO等の品質管理文書
    • 工場レイアウト図:製造ライン、保管エリアの配置図
    • 洗浄手順書:製造設備の洗浄方法と頻度

ステップ5〜6:書類審査と現場監査

書類審査とは、提出書類に基づいて認証機関が原材料のハラル性と製造工程の適合性を確認する審査のことです。

書類審査を通過すると、認証機関の監査員が工場を実地調査(現場監査)します。監査で確認される主なポイントは以下のとおりです。

    • 製造設備:ナジス(不浄物)と判定される材料で作られていないこと。動物の毛のブラシは禁止
    • 施設の配置:豚農場・豚加工施設から効果的に隔離・絶縁されていること
    • 保管・輸送:ハラル製品と非ハラル製品の適切な分離
    • 従業員教育:ハラル管理に関する教育訓練の実施状況
    • 礼拝スペース:ムスリム従業員用の礼拝スペースの設置(MS1500:2019で義務)

不適合事項があれば是正措置を行い、再監査を受けます。

ステップ7:認定とその後

認定とは、認証機関のシャリーア評議会(最低3名で構成)が最終判断を行い、ハラル認証書とマーク使用権を付与することです。

認証取得後は以下の義務が生じます。

    • 定期監査:年次または定期的な監査に対応する(頻度は機関により異なる)
    • 変更報告:原材料や製造工程の変更があった場合は速やかに認証機関に報告
    • 更新手続き:有効期限(通常1〜4年)前に更新申請を行う
    • マークの適正使用:認証されていない製品への不正使用は禁止

費用・期間のまとめ

項目目安備考
取得期間半年〜1年ISO/HACCP未取得の場合はさらに数ヶ月加算
初期費用(飲食店)数万〜十数万円店舗認証の場合
初期費用(食品工場)数十万〜数百万円製品数・ライン数で変動
年間維持費数万〜数十万円定期監査費用、更新料を含む

費用の詳細は「ハラル認証の費用相場|認証機関別の料金比較表」で解説しています。

よくある質問(FAQ)

HACCPを取得していないと申請できませんか?

認証機関によって異なります。JHAではISO9001・HACCP・GMP・ISO22000のいずれかが前提条件です。一方、他の機関では前提条件がない場合もあります。ただし、品質管理体制が整っていないと審査通過は困難です。

取得までどのくらいかかりますか?

ISO/HACCP取得済みの工場で半年〜1年が目安です。品質管理体制の構築から始める場合はさらに数ヶ月加算されます。書類準備の段階で時間がかかるケースが多いです。

社内にムスリム従業員がいなくても取得できますか?

取得自体は可能ですが、MS1500:2019ではハラル管理責任者としてムスリム人材の任命が求められます。社内にムスリム従業員がいない場合は、外部のハラルアドバイザーとの契約で対応できるケースがあります。認証機関に相談してください。

製造ラインを専用にする必要がありますか?

Codexガイドラインでは、ハラル食品は非ハラル食品と同じ施設の異なるセクション/ラインで製造可能です。ただし、交差汚染防止のための分離措置が必須です。以前に非ハラル食品に使用した設備は、適切な洗浄後に使用可能とされています。

インドネシア向けの認証はどの機関で取得すべきですか?

日本の主要4機関(JMA・JHA・MPJA・JIT)はいずれもBPJPHとの相互承認手続きを行っています。ただし、承認状況は変動するため、申請前に最新の承認リストを確認してください。

関連記事:日本からハラル食品を輸出する方法

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ハラル認証取得の前提条件──HACCP/ISO9001の有無で難易度が激変する

多くの記事が触れていない「取得の前提条件」について、日本ハラール協会(JHA)の公開要件を引用します。

ISO9000s、GMP、HACCP、ISO22000のいずれかの認定を取得していることがハラール認証申請の前提条件

出典:日本ハラール協会「認証取得手順」

つまり、HACCPやISO9001を未取得の工場は、ハラル認証の前にこれらを取得する必要があります。逆に言えば、すでに食品衛生管理の国際規格を持っている工場は、ハラル認証取得が大幅に楽になります。ジェトロのASEAN比較レポートも「各国のハラール認証規格はISO9001、HACCP、GMPをベースに作成されている」と明記しています。

標準7ステップの詳細解説

ハラル認証取得の標準フローを、各ステップでやるべきことと注意点とともに整理します。

ステップ1:申請

認証機関を選定し、申請書類を提出します。原材料リスト、製造工程図、工場レイアウト、衛生管理体制、品質管理マニュアルなどが基本書類です。BPJPH直接申請の場合はSIHALALポータル経由で電子申請が必須になります。

ステップ2:書類審査

原材料1つひとつのハラル性を確認します。動物由来成分(ゼラチン・乳化剤・酵素)、アルコール(香料溶媒含む)、調味料エキス(豚由来エキスの可能性)について、サプライヤーから「ハラル証明」または「成分由来証明」を取得します。この段階で原料変更を求められるケースが半数以上です。

ステップ3:現場調査・施設検査

認証機関の監査員が工場を訪問します。確認項目は以下:

  • 非ハラル製品との物理的隔離(ライン分離・倉庫区分)
  • 洗浄手順とその記録
  • 豚・犬由来の汚染履歴がある設備の有無(あればセルトゥが必要)
  • ムスリム要員の配置(マレーシアMS1500要件)
  • 礼拝スペース(マレーシア基準)
  • 器具の素材(動物の毛のブラシは禁止)

ステップ4:成分分析(必要時)

原材料の由来が書類だけで確認できない場合、DNA検査やアルコール分析が行われます。検査費用は10万〜50万円程度。費用は申請者負担です。

ステップ5:審査委員会

機関内の専門家パネル(イスラム法学者・食品技術者)が判定します。マレーシアの場合、平均で申請から認定までの所要時間は半年〜最長1年です。

ステップ6:認定・マーク使用許可

認証書が発行され、ハラルマークの使用が許可されます。認証書には対象製品名、製造工場、有効期限が明記されます。

ステップ7:定期監査

通常1〜2年ごとに更新監査があります。原材料変更・サプライヤー変更があった場合は更新前でも報告が必要です。報告漏れが発覚すると認証取消のリスクがあります。

主要認証機関の比較表

日本企業が直接申請できる認証機関の比較です。出典は農水省ハラール基礎情報(2025年時点)です。

機関種別相互承認の広さ特徴
JHA(日本ハラール協会)NPO法人7機関(JAKIM/BPJPH/MUIS/CICOT/GAC/SFDA/UAE)中東を含む最広範囲
JIT(日本イスラーム文化センター)宗教法人9機関(上記+カタール・トルコ)国際ネットワーク最大
JMA(日本ムスリム協会)宗教法人4機関(JAKIM/BPJPH/MUIS/CICOT)東南アジア向けに特化
MPJA一般社団法人3機関(JAKIM/BPJPH/SFDA)サウジ向けに強み

機関選定の決め手は「輸出先国がその機関を承認しているか」です。インドネシア向けならBPJPH承認、サウジ向けならSFDA承認が必須です。日本の認証機関は常に承認取消リスクがあるため、契約前に最新の承認状況を確認しましょう。

BPJPH承認海外認証機関(FHCB)になるための要件

2026年義務化に向けて、海外認証機関がBPJPHから承認(FHCB登録)を得るための要件をBPJPH Perkaban 3/2023から抜粋します。日本機関の承認状況を確認する際の判断基準として参考にしてください。

  • 政府または現地のイスラム宗教機関が設立
  • 独立、有能、利益相反なし
  • ISO/IEC 17065に基づく認証
  • シャリーア評議会/ファトワ評議会:最低3名
  • ハラル監査員:最低3名(資格要件あり)
  • ISO 17025準拠の検査機関と連携
  • SIHALALポータル経由で申請
  • 認定証の有効期間:4年

これらの要件を満たさない機関の認証は、インドネシア政府に受け入れられません。認証機関選定時には「FHCB登録済みか」を必ず確認してください。

まとめ

ハラル認証の取得は、事前準備から認定まで7つのステップで進みます。最も重要なのは「輸出先国が認める認証機関を選ぶこと」と「ISO/HACCP等の品質管理基盤を整えること」の2点です。

    • 取得期間は半年〜1年、ISO/HACCP取得済みなら短縮可能
    • 日本の4大認証機関はすべてJAKIM・BPJPHと相互承認済み
    • 既存の品質管理体制を活かせるため、ゼロからの構築ではない

まずは「ハラル認証の費用相場」で予算感を確認し、認証機関への問い合わせを始めましょう。インドネシア向けの場合は「義務化の最新情報」も必ず確認してください。

参考文献