食品メーカーのハラル認証ガイド|原材料チェックから取得まで

食品メーカーのハラル認証ガイド|食品工場のイメージ 食品メーカー実務
この記事のポイント
  • 食品メーカーのハラル認証は「原材料確認→製造ライン整備→体制構築→申請→監査」の5ステップで取得できる
  • ゼラチン・ラード・ショートニング・乳化剤など豚由来成分7種が要注意リスト
  • 醤油・みりん・味噌など日本特有の調味料にはそれぞれ異なるハラル対応が必要
  • HACCP・ISO9001を取得済みの工場はハラル認証取得が大幅に容易になる
  • よつ葉乳業・マルコメ・六甲バターなど日系食品メーカーの取得実績が増加中

食品メーカーのハラル認証取得|全体の流れ

食品メーカーのハラル認証取得とは、原材料の調達から製品の出荷まで、サプライチェーン全体でイスラム法に適合していることを第三者機関に証明してもらうプロセスのことです。(2026年3月時点の情報です)

ハラル認証では、原材料→加工→包装→貯蔵→物流→陳列の全工程でハラル性の確保が求められます。食品メーカーが取得する場合、以下の5ステップで進めます。

ステップ内容期間目安
1. 原材料の確認・切替全原材料の豚由来成分・アルコールをチェック1〜3ヶ月
2. 製造ラインの整備非ハラル製品との分離・器具の洗浄対応1〜2ヶ月
3. 社内体制の構築ハラル管理チーム設立・ムスリム人材任命1〜2ヶ月
4. 認証機関への申請書類作成・提出・書類審査1〜3ヶ月
5. 現場監査・認定監査員による工場実地調査・認証書発行1〜2ヶ月

全体の所要期間は半年〜1年が目安です。既にHACCPやISO9001を取得済みの工場は、品質管理体制の基盤があるため大幅に短縮できます。

ステップ1:原材料の確認と禁止成分チェック

原材料の確認とは、自社製品に使用しているすべての原材料・添加物について、ハラル性(イスラム法への適合性)を精査することです。食品メーカーにとって最も工数がかかるステップです。

豚由来の要注意成分リスト

以下の成分は豚由来の場合にハラムとなるため、仕入先への確認が必須です。

成分名リスクハラル対応策
ゼラチン豚皮由来が多い牛由来・魚由来に切替
ラード(豚脂)豚由来のため全面禁止植物油脂に切替
ショートニング豚脂由来の場合あり植物性ショートニングに切替
乳化剤動物由来の場合あり植物由来品を指定
グリセリン動物由来の場合あり植物由来品を指定
コラーゲン豚由来は禁止魚由来コラーゲンに切替
L-システイン動物の毛髪由来の場合あり発酵法製造品を指定

香料・調味料を含むすべての原材料が確認対象です。添加物だけでなく、加工助剤や直接接触する包装材、さらには機械用グリースや消毒剤もチェックの範囲に含まれます。

アルコールの基準

アルコール飲料は全面禁止です。食品添加物としてのアルコールについては学派により判断が異なりますが、インドネシアBPJPH基準では発酵飲料で0.5%以上のアルコール含有はハラムとされています。料理酒もアルコール飲料扱いのため使用できません。

日本特有の調味料への対応

日本の食品メーカーが特に注意すべきなのが、日常的に使用する調味料のハラル対応です。

調味料ハラル上の問題対応方法
醤油発酵過程でアルコールが生成される学派で判断が異なる。ハラル認証済み醤油を使用
みりんアルコール含有のためハラムアルコール不使用の「みりん風調味料」に切替
味噌大豆ベースで基本的にハラル出汁にかつおぶしを使う場合はと殺方法の問題あり
だしかつおぶしは魚のと殺方法が問題となる場合あり昆布・椎茸だしに切替、または認証済みだしを使用
マヨネーズ乳化剤・酢の原料に注意卵・酢ベースで基本ハラルだが原料確認が必要
料理酒アルコール飲料扱い使用不可。代替調味料を検討

原材料のハラル対応について詳しくは「ハラル対応の原材料リスト|禁止成分一覧」も参考にしてください。

ステップ2:製造ラインと施設の整備

製造ラインの整備とは、ハラル製品と非ハラル製品の交差汚染を防止するために、工場の設備・レイアウト・洗浄方法を見直すことです。

施設の分離要件

マレーシア規格MS1500:2019では、以下の施設要件が定められています。

  • 豚農場・豚加工施設から効果的に隔離・絶縁されていること
  • と殺・加工施設はハラル専用であること
  • ムスリム礼拝スペースの設置が義務

インドネシアのPP42/2024では、と殺・加工・保管・包装・流通・販売・提供の全7工程でハラルと非ハラルの分離が求められます。

器具・機器の要件

製造に使用する器具にも明確な基準があります。

  • ナジス(不浄物)と判定される材料で作られた器具は使用禁止
  • 動物の毛のブラシは禁止
  • 豚・犬に接触した器具はセルトゥ洗浄(水で7回洗浄、うち1回は土混じりの水)が必要
  • ナジスラインをハラルラインに転換した後、再度ナジスラインに戻すことは不可

既存の製造ラインを転換する場合は不可逆であることに留意してください。

衛生管理の前提

ハラル認証はGHP(適正衛生規範)、GMP(適正製造規範)、HACCPに基づく衛生管理が前提です。各国のハラル認証規格はISO9001やHACCPをベースに作成されているため、これらを取得済みの工場はハラル認証への移行がスムーズです。

ステップ3:社内体制の構築

社内体制の構築とは、ハラル認証の取得・維持に必要な管理組織と教育体制を整えることです。

インドネシアSJPH(ハラル製品保証基準)の5基準

インドネシア向けの認証を取得する場合、SJPH(Sistem Jaminan Produk Halal)と呼ばれる5つの基準を満たす必要があります。

基準内容
1. コミットメントと責任ハラル管理チームの設立、年1回以上の研修実施
2. 原料管理原材料・添加物・加工助剤・包装材・グリース・消毒剤すべてが対象
3. ハラル生産プロセス共用施設では豚肉・豚肉由来物質の使用不可
4. 製品管理非ハラル商品と間違え得る名称は不可。トレーサビリティ確保
5. モニタリングと評価年1回以上の内部監査とマネジメントレビュー

ムスリム人材の任命

MS1500:2019では、内部ハラル管理システムを担当するムスリム人材の任命が必要とされています。インドネシア向けではハラルスーパーバイザー(ムスリム)を最低1名配置する義務があります。

中規模・大規模・外国企業は、研修証明書と職能証明書の両方が必要です。外部研修機関IHATEC(インドネシア・ハラール研修教育センター)の研修が広く認知されており、費用は890USD/名が目安です。

ステップ4〜5:申請から監査・認定まで

申請から認定までとは、認証機関に書類を提出し、現場監査を経て認証書の発行を受けるプロセスのことです。

認証機関の選定

日本には4つの主要認証機関があり、輸出先国によって対応する機関が異なります。いずれもマレーシアJAKIMとインドネシアBPJPHの相互承認を持っています。認証機関の選び方について詳しくは「ハラル認証の取得方法|条件・基準・審査の流れ」をご覧ください。

必要な申請書類

  • 全原材料のハラル性を証明する書類(仕入先の認証書コピー等)
  • 製造フロー図(原材料の受入から製品出荷まで)
  • 工場レイアウト図(製造ライン・保管エリアの配置)
  • 品質管理マニュアル(HACCP・ISO等の文書)
  • 洗浄手順書(設備の洗浄方法と頻度)

費用の目安

認証先主な費用項目金額目安
マレーシアJAKIM向け(JHA経由)新規認証66万円〜
インドネシアBPJPH(直接)登録費用12,500,000ルピア/件
インドネシアBPJPH(海外HCB経由)登録費用800,000ルピア(約50USD)
シンガポールMUIS製品認証SGD750〜1,210/年

費用の詳細は「ハラル認証の費用相場|認証機関別の料金比較」で比較しています。

日系食品メーカーの認証取得事例

日系食品メーカーの認証取得事例とは、実際にハラル認証を取得して海外市場に参入した日本企業の実績のことです。

認証年企業名製品認証機関
2014年よつ葉乳業乳製品JHA
2014年マルコメみそJHA
2016年日清食品インスタント麺MUI
2018年六甲バターチーズMUI
2023年伊藤園お〜いお茶BPJPH

日系企業のハラル認証取得は2014〜2019年に集中しており、その大半が食品分野です。2026年10月のインドネシア輸入食品義務化に向けて、今後さらに取得企業が増加すると見込まれています。

よくある質問(FAQ)

HACCP取得済みならハラル認証は取りやすいですか?

はい。各国のハラル認証規格はISO9001やHACCPをベースに作成されているため、これらを取得済みの工場は品質管理体制の基盤があり、ハラル認証への移行がスムーズです。書類準備の時間も大幅に短縮できます。

醤油はハラル認証で使用できますか?

醤油は発酵過程でアルコールが生成されるため、学派によって判断が異なります。キッコーマンなどハラル認証済みの醤油を使用するのが安全です。みりんはアルコール含有のためハラムとされ、使用できません。

一度ハラルラインに転換したら元に戻せますか?

MS1500:2019の規定では、ナジス(不浄物)ラインをハラルラインに転換した後、再度ナジスラインに戻すことは認められていません。ライン転換は不可逆の判断となるため、慎重に検討する必要があります。

食品メーカーのハラル認証取得にはどのくらいの期間がかかりますか?

HACCP・ISO取得済みの工場で半年〜1年が目安です。原材料の切替が多い場合や、製造ラインの改修が必要な場合はさらに時間がかかります。インドネシア向けの輸入食品は2026年10月が期限のため、早めの着手が重要です。

インドネシア向けの認証取得ルートは?

2つのルートがあります。(1)BPJPHに直接申請する方法と、(2)海外のハラル認証機関(HCB)で認証を取得してからBPJPHに登録する方法です。日本の認証機関(JHA・JMA等)経由で取得し、BPJPHに登録するルートが一般的です。

関連記事:ハラル認証の菓子・水産加工・冷凍食品

関連記事:日本からハラル食品を輸出する方法

まとめ

食品メーカーのハラル認証取得は、原材料チェック→製造ライン整備→社内体制構築→申請→監査の5ステップで進めます。

  • ゼラチン・ラード・乳化剤など豚由来成分7種の確認が最初の関門
  • 醤油・みりんなど日本特有の調味料は個別にハラル対応が必要
  • HACCP・ISO取得済みなら品質管理の基盤を活かして効率的に取得できる
  • 製造ラインの転換は不可逆。事前に十分な検討を行うこと

まずは自社製品の原材料リストを作成し、禁止成分が含まれていないか確認するところから始めましょう。インドネシア向け輸入食品の義務化期限(2026年10月)が迫っているため、「インドネシアのハラル認証義務化」も併せて確認してください。

参考文献