- 2026年10月17日の義務化に認証が間に合わなくても、輸出を完全停止する必要はない
- 「非ハラール表示」を付ければ認証なしでもインドネシアへの輸入・流通は可能
- ポジティブリストに該当する製品(生鮮品・未加工品等)は認証が免除される
- 罰則は4段階(警告→罰金→撤去→販売停止)で、即座に最大罰則が適用されるわけではない
- 主力品目だけ先に認証を取得し、順次拡大する段階的アプローチが現実的
2026年3月時点の情報です。
ハラル認証が「間に合わない」とはどういう状況か
ハラル認証が間に合わないとは、2026年10月17日のインドネシア義務化期限までに、BPJPHの認証手続きが完了しない状態を指します。
認証取得には通常半年〜1年かかります。書類準備、原材料の確認、製造ラインの整備、現場監査、BPJPHの審査と、各工程に時間を要するためです。2026年3月時点で未着手の企業は、期限内の取得が難しい状況にあります。
ただし「間に合わない=インドネシア市場から完全撤退」ではありません。以下の3つの選択肢があります。
選択肢1:非ハラール表示で輸出を継続する
非ハラール表示とは、製品が「ハラールではない」ことを明示するラベルを貼って流通させる方法です。豚肉やアルコール飲料などのハラーム製品も、この表示があればインドネシアに輸入・流通が可能です(出典:USDA GAIN 2025)。
非ハラール表示の具体的な要件
非ハラール表示には、以下の対応が必要です。
- 「non-halal」であることを写真・記号・文字で明示する
- 豚由来成分を含む製品:「MENGANDUNG BABI」(豚を含む)の文字と豚の絵を表示
- アルコール飲料:「MINUMAN BERALKOHOL」の表示+アルコール含有率+「21歳未満または妊婦は飲酒禁止」の表示
非ハラール表示のメリット・デメリット
| 観点 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| コスト | 認証費用が不要 | ラベル変更・再印刷コストが発生 |
| 市場 | 輸出を継続できる | ムスリム消費者の購入対象外になる |
| 時間 | 短期間で対応可能 | 長期的にはブランド毀損のリスク |
| 流通 | 法的に問題なし | 小売店での取扱いが限定される可能性 |
この選択肢は、認証取得までの「つなぎ」として有効です。特に、主な販売先が非ムスリム層(在留外国人や華人系住民)の場合は、実質的な売上への影響が小さいケースもあります。
選択肢2:ポジティブリスト(認証免除品目)を活用する
ポジティブリストとは、インドネシア政府が定めた「ハラール認証が不要な製品リスト」のことです。該当する品目であれば、認証を取得しなくても輸出できます。
認証免除の対象品目
- 未加工の新鮮な植物製品(生鮮果物、生鮮野菜、穀物、ナッツ等)
- 最小限の加工のみの製品(乾燥野菜、乾燥海藻等)
- 水中でのみ生存する水生動物(全て)
- 食品添加物・加工助剤として4,000以上の化学物質(宗教大臣決定2021年第1360号)
具体例としては、ココナッツパウダー、ココアパウダー、小麦グルテン、蜜蝋なども含まれます(出典:USDA GAIN 2025)。
注意点:加工したら認証が必要
ポジティブリスト掲載品であっても、調味・塩漬け・コーティング・他製品との混合などの加工を施した場合はハラール認証が必要になります。また、収穫から包装までのフローチャート提出は免除品目でも求められます。
自社製品がポジティブリストに該当するかの確認は、インドネシアのハラル認証義務化の解説記事も参考にしてください。
選択肢3:段階的に認証を取得する(推奨)
段階的認証取得とは、全品目を一度に申請するのではなく、売上貢献度の高い主力品目から優先的に認証を取得していく方法です。
段階的アプローチの3ステップ
| ステップ | 内容 | 目安期間 |
|---|---|---|
| Step 1 | 主力品目(売上上位1〜3品目)だけ認証を取得 | 6〜12ヶ月 |
| Step 2 | 残りの品目を順次追加申請 | 3〜6ヶ月/品目 |
| Step 3 | 全品目の認証完了 | — |
認証ルートは2つある
日本企業がインドネシア向けのハラール認証を取得するルートは2つあります。
| ルート | 概要 | 有効期限 | 費用目安 |
|---|---|---|---|
| BPJPH直接申請 | BPJPHに直接オンライン申請 | 無期限(PP42/2024で永久有効化) | 認証機関による |
| HCB(海外認証機関)経由 | 日本のBPJPH認定機関を通じて申請 | FHCBの認定証有効期間4年 | 登録料50USD+認証費用 |
BPJPHが認定する日本の認証機関はJMA、JHA、MPJA、JITの4機関です。認証機関の選び方はBPJPHとは?の記事で詳しく解説しています。
補助金を活用してコストを抑える
ハラール認証取得にかかる費用は、国や自治体の補助金・助成金で一部をカバーできます。特にジェトロの海外展開支援事業や、自治体独自の輸出促進補助金の活用を検討してください。
認証が間に合わない場合の罰則リスク
罰則とは、2026年10月17日以降にハラール認証も非ハラール表示もなく製品を流通させた場合に科される行政処分のことです。
インドネシアの罰則は以下の4段階で適用されます(出典:USDA PP42/2024解説)。
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 第1段階 | 書面による警告 |
| 第2段階 | 罰金(最大20億ルピア=約1,900万円相当) |
| 第3段階 | 製品の市場からの撤去 |
| 第4段階 | 事業活動の停止 |
重要なのは、罰則は段階的に適用される点です。いきなり販売停止になるわけではなく、まず書面での警告から始まります。ただし、これは「対応しなくてもよい」という意味ではありません。罰則の詳細はハラル認証の罰則と違反リスクの記事をご確認ください。
次のステップ:今から始めるべきアクション
ここまでの選択肢を踏まえ、今から取るべき具体的なアクションを整理します。
今すぐ確認すべき3つのポイント
- 自社製品がポジティブリストに該当するか確認:未加工・最小限加工の製品は認証免除の可能性がある
- 主力品目を特定する:インドネシア向け売上の上位1〜3品目を洗い出し、優先順位をつける
- 認証機関に相談する:日本のBPJPH認定4機関(JMA・JHA・MPJA・JIT)に現在のスケジュール感を確認する
タイムライン別の推奨対応
| 現在の状況 | 推奨アクション |
|---|---|
| まだ何も着手していない | 主力品目で認証申請を開始+残りは非ハラール表示で対応 |
| 認証申請中だが期限に間に合わない | 申請中の品目は継続+未申請品目は非ハラール表示でつなぐ |
| ポジティブリスト該当品のみ | フローチャートを準備し、加工の有無を確認・整理する |
| インドネシア市場の優先度が低い | 非ハラール表示で最低限の対応を行い、市場動向を注視する |
よくある質問(FAQ)
2026年10月を過ぎたら、認証なしの製品は一切輸出できなくなりますか?
いいえ。非ハラール表示(「non-halal」の明示)を行えば、認証なしでもインドネシアへの輸入・流通は可能です。ただし、ムスリム消費者の購入対象からは外れます。
ポジティブリストに該当するかはどこで確認できますか?
インドネシア宗教大臣決定2021年第1360号に掲載されています。BPJPHの公式サイト(bpjph.halal.go.id)またはジェトロの相談窓口で確認できます。
認証取得の費用はどのくらいかかりますか?
認証機関や品目数により異なりますが、HCB経由の場合は登録料50USDに加え、認証機関ごとの審査費用がかかります。国や自治体の補助金を活用すれば、費用の一部をカバーできます。
罰則はいきなり最大額が適用されますか?
いいえ。罰則は段階的に適用されます。まず書面による警告から始まり、改善されない場合に罰金(最大20億ルピア)、製品撤去、事業停止と進みます。
PP42/2024で認証の有効期限が無期限になったのは本当ですか?
はい。政令2024年第42号により、ハラール証明書の有効期限は撤廃され永久有効になりました。ただし、認証取得後は年次の自己宣言(self-declaration)が必要です。原材料やレシピを変更した場合は再審査が求められます。


