- インドネシアのムスリム人口は約2.4億人(総人口の87.4%)で世界最大のハラル食品市場
- BPJPH認証は159万件超・404万製品超(2024年3月時点)で急拡大中
- 2026年10月に輸入食品を含む19カテゴリの義務化が予定されている
- 味の素・日清食品・伊藤園など日系企業の参入実績が蓄積されている
- 中国の水産物輸入停止を受け、日本産食品の輸出先多様化としてもインドネシア市場が注目されている
インドネシアのハラル食品市場の規模
インドネシアのハラル食品市場とは、世界最大のムスリム人口を抱えるインドネシアにおいて、イスラム法に則って製造・流通する食品の市場のことです。(2026年3月時点の情報です)
インドネシアの総人口約2.75億人のうち、87.4%にあたる約2億4,080万人がムスリムです。これは世界のどの国よりも多い数字であり、東南アジア全体のムスリム人口2.8億人の大部分を占めています。2050年には東南アジアのムスリム人口は3.1億人まで増加すると予測されており、インドネシアを中心としたハラル食品の需要は今後も拡大が見込まれます。
市場の特徴として、インドネシアでは食品・飲料だけでなく、食品添加物、菓子、乳製品、農業関連製品までハラルの適用範囲が広いことが挙げられます。さらに化粧品・医薬品・衣料品にもハラル認証義務化が段階的に拡大しており、食品を起点としたハラル対応が他分野にも波及する構造になっています。
BPJPH認証の実績と成長率
BPJPHとは、インドネシア政府がハラル認証を一元管理するために設立した「ハラル製品保証実施機関」のことです。2019年にMUI(ウラマー評議会)から認証業務が移管されました。
2024年3月時点の認証実績は以下のとおりです。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 認証発行数 | 1,592,149件 |
| 認証製品数 | 4,048,526件 |
| 2024年目標 | 1,000万製品 |
MUI時代の認証企業数は2019年の3,986社から2023年には18,701社へと約4.7倍に急増しています。BPJPH移管後は政府主導の義務化により、さらに加速度的に認証件数が伸びています。
企業規模別の内訳
認証取得企業の規模別内訳を見ると、特徴的な偏りがあります。
| 企業規模 | 構成比 |
|---|---|
| 零細企業 | 96% |
| 小規模企業 | 3% |
| 大規模・海外企業 | 1% |
零細企業の比率が圧倒的に高い理由は、インドネシア政府がSEHATI(無料認証制度)を導入し、零細事業者の認証取得を支援しているためです。一方で大規模企業・海外企業はわずか1%にとどまっており、日本を含む海外企業にとっては参入余地が大きいことを示しています。
製品カテゴリ別の認証構成
どの食品カテゴリで認証が多いかを見ると、市場の需要構造が把握できます。
| カテゴリ | 構成比 |
|---|---|
| スナック菓子 | 19% |
| ベーカリー製品 | 18% |
| 飲食店サービス | 15% |
| 加工飲料 | 11% |
| 穀物加工食品 | 9% |
| 果物野菜加工食品 | 8% |
| 砂糖・甘味料 | 5% |
| 水産物加工食品 | 5% |
| その他 | 10% |
スナック菓子(19%)とベーカリー製品(18%)が合計37%を占めており、日本の食品メーカーが強みを持つ菓子・パン分野は特に参入チャンスがあると読み取れます。また水産物加工食品が5%と比較的小さいカテゴリですが、後述する日本産水産物の輸出多様化の文脈で今後の伸びが期待される分野です。
インドネシアのハラル認証義務化の動向
インドネシアのハラル認証義務化とは、ハラル製品保証法(Law No.33/2014)に基づき、インドネシア国内で流通する製品にハラル認証の取得を段階的に義務づける制度のことです。
義務化のスケジュール
| 期限 | 対象品目 |
|---|---|
| 2024年10月17日(実施済み) | 食品・飲料・食肉処理(国内大中企業) |
| 2026年10月17日 | 化粧品、医薬部外品、サプリ、包装材、衣料品、日用品、輸入食品、国内零細小規模食品 等 |
| 2029年10月17日 | 市販薬(OTC)、医療機器(B) |
| 2034年10月17日 | 処方薬、医療機器(C) |
日本企業にとって最も影響が大きいのは2026年10月17日の期限です。この時点で輸入食品を含む19カテゴリが義務化対象となります。具体的には、乳製品、菓子、ベーカリー製品、肉・肉製品、魚介類加工品、加工飲料、食品添加物など、日本からの輸出品の多くが該当します。
政令42/2024(PP42/2024)により、当初2024年10月に予定されていた輸入食品の義務化は2026年10月まで延長されました。延長理由は国内外企業のコンプライアンス対応のための時間確保とされています。ただし、認証なしでも「非ハラル」表示をすれば輸入・流通は可能です。
米国からインドネシアへの影響対象品目の輸出額は約25億ドルとされており、義務化の影響規模の大きさがうかがえます。
認証申請のルート
日本企業がインドネシア向けにハラル認証を取得するルートは主に2つあります。
ルート1:日本国内の認証機関を利用する方法
BPJPHと相互承認協定(MRA)を締結した日本の認証機関を通じて申請します。現在認定されている機関は以下の4つです。
- 日本ムスリム協会(JMA)
- 日本ハラール協会(JHA)
- ムスリムプロフェッショナルジャパン協会(MPJA)
- 日本イスラーム文化センター(JIT)
ルート2:インドネシア現地で申請する方法
インドネシアに現地法人・工場がある場合、BPJPHのオンラインポータル「SIHALAL」を通じて直接申請します。
いずれのルートでも、食品安全面ではBPOM(食品医薬品監督庁)の審査とBPJPHのハラル認証を並行して申請できるため、準備を同時進行させることで取得期間を短縮できます。
日本企業の参入チャンスと競合環境
日本企業の参入チャンスとは、インドネシアのハラル食品市場において日本の食品メーカー・商社が活用できるビジネス機会のことです。
すでに参入している日系企業の事例
インドネシア市場には、1990年代から複数の日系企業がハラル認証を取得して参入しています。
| 認証年 | 企業 | 製品 | 認証機関 |
|---|---|---|---|
| 1997年 | インドネシアヤクルト | 乳酸菌飲料 | MUI |
| 1998年 | インドネシア味の素 | 調味料 | MUI |
| 2016年 | 日清食品 | インスタント麺 | MUI |
| 2018年 | 六甲バター | チーズ | MUI |
| 2023年 | 伊藤園 | Oi Ocha | BPJPH |
| 2024年 | イオンインドネシア | スーパー(総菜・精肉・鮮魚・ベーカリー・青果) | BPJPH |
注目すべきは、2023年以降の新規参入企業がBPJPH認証を取得している点です。旧MUI認証からBPJPH認証への切り替えが進む中、新規参入企業は最初からBPJPH認証を取得するのが標準的なルートになっています。
日本産食品の輸出多様化とインドネシア
近年、中国による日本産水産物の輸入停止措置を受けて、日本政府は食品輸出先の多様化を推進しています。インドネシアは人口2.75億人を抱える巨大市場であり、水産物を含む日本産食品の新たな輸出先として注目されています。
インドネシアでは水産物加工食品の認証構成比が5%とまだ小さく、日本の強みである水産加工技術を活かした参入余地があります。ただし、魚介類加工品は2026年10月の19カテゴリ義務化に含まれるため、ハラル認証の取得が輸出の前提条件となります。
ハラール・ポジティブリスト(免除品目)の活用
すべての食品にハラル認証が必要なわけではありません。「ハラール・ポジティブリスト」に掲載された製品は認証が免除されます。
- 未加工の生鮮果物・野菜・穀物・ナッツ
- 最小限の加工のみの製品
- 水中でのみ生存する水生動物(すべて免除)
- 食品添加物・加工助剤として4,000以上の化学物質
ただし、調味・塩漬け・コーティングなどの加工を施した場合は認証が必要です。また、ポジティブリスト掲載品でも収穫から包装までのフローチャート提出は求められます。
参入にあたっての実務ポイント
インドネシアのハラル食品市場に参入するにあたり、実務上押さえておくべきポイントを整理します。
インドネシア政府のハラル産業計画
インドネシア政府は「Master Plan Industri Halal 2023-2029」を策定し、ハラル産業の育成を国家戦略として推進しています。2025年7月にはBPJPHが宗教省から分離し大統領直轄機関に格上げされたことからも、政府のハラル産業への本気度がうかがえます。
認証制度の最新変更点
PP42/2024の施行により、以下の制度変更が行われています。
- 証明書の有効期限が撤廃(永久有効化)。ただし年次の自己宣言が必要
- 小規模・零細事業者向けの簡易認証制度(自己宣言制度)を導入
- ハラルと非ハラルの製造・保管・流通は物理的に分離が必要
特にインドネシアのハラル認証義務化の全体像を把握したうえで、自社製品が義務化対象に該当するかを確認することが第一歩です。認証取得の具体的な方法はBPJPHとは?の記事で詳しく解説しています。
非ハラル製品の選択肢
豚肉やアルコール飲料などハラルに該当しない製品でも、「非ハラル(non-halal)」表示を付ければインドネシアに輸入・流通させることは可能です。豚由来成分を含む製品には「MENGANDUNG BABI」(豚を含む)の文字と豚の絵の表示が義務づけられています。ハラル認証の取得が難しい製品については、非ハラル表示での流通も選択肢の一つです。
よくある質問(FAQ)
インドネシアのハラル食品市場は日本企業にとって魅力的ですか?
インドネシアはムスリム人口約2.4億人を抱える世界最大のハラル食品市場です。BPJPH認証取得企業のうち大規模・海外企業はわずか1%にとどまっており、海外企業の参入余地は大きいといえます。菓子・ベーカリー分野は認証構成比37%を占め、日本の食品メーカーの技術が活かしやすい分野です。
日本から食品を輸出するにはハラル認証が必須ですか?
2026年10月17日以降、輸入食品を含む19カテゴリでハラル認証が義務化される予定です。認証なしでも「非ハラル」表示をすれば輸入自体は可能ですが、ムスリム消費者への販売が事実上難しくなります。未加工の生鮮品や水生動物はポジティブリストにより認証免除の対象です。
日本国内でインドネシア向けのハラル認証を取得できますか?
はい。BPJPHと相互承認協定を締結したJMA・JHA・MPJA・JITの4機関を通じて、日本国内で認証を取得できます。インドネシアに現地法人がある場合はSIHALALポータルからの直接申請も可能です。
SEHATIとは何ですか?日本企業も利用できますか?
SEHATIはインドネシア政府が零細事業者向けに提供する無料のハラル認証制度です。インドネシア国内の零細企業が対象であり、日本企業(海外企業)は対象外です。日本企業はBPJPH認定の認証機関を通じた通常ルートで認証を取得します。
BPOMとBPJPHの違いは何ですか?
BPOM(食品医薬品監督庁)は食品の安全性・品質を審査する機関で、BPJPH(ハラル製品保証実施機関)はハラル適合性を審査する機関です。インドネシアに食品を輸出する場合、両方の審査が必要ですが、並行して申請できるため同時に準備を進めることが可能です。
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